16年の振り返り|一次資料ベース(2026年9月5日)

福岡市の16年を、
数字で振り返る

堅実だった。失敗からも学び、もっと厳しい時代に向き合う。

この16年の福岡市は、よくやってきた側の市です。借金(市債残高)はピーク時から約3割減。市民ひとりあたりの建設投資は、20ある政令市の平均より低い。税収も過去最大です。市が自ら行った1億円以上の大きな事業を一つずつ、始める前の「約束」と、結果をくらべて採点してみました。

型のミニ用語集|直営=市が建てて運営/PFI=会社にまとめて頼み市が分割払い/DBO=運営は会社・支払いは一括/リース=設備を毎年借りる/定期借地=土地を貸して家賃/規制緩和=お金を出さずルールを変える(天神ビッグバン)

採点表:1億円以上の主な事業13件(横にスクロールできます)

◎=約束以上にうまくいった/○=できたが、高くついた・遅れた/△=動いているが、約束どおりか確かめられない/×=止まった・こわれた

事業市のお金どうなった採点
天神ビッグバン規制緩和ほぼゼロ目標30棟に対し93棟の建替えが決定。ただし家賃が上がり、昔からのお店の退出も進む
旧大名小学校の跡地定期借地ゼロ(もらう側)ホテルなどが建ち、市は毎年約5.9億円の家賃をもらっている。土地は売っていない
水道・下水道の更新公営企業料金でまかなう値上げせずに水道管を毎年45km以上更新し、毎年黒字。漏水率2.0%は全国トップ級
地下鉄七隈線の延伸直営約600億円費用は当初の450億円から3割増え、開業も2年遅れた。ただしお客さんは予測を超え、地下鉄会計は過去最高の黒字に
学校体育館のエアコンリース10年で約120億円令和9年度までに全校へ設置中。速さ優先の型は合理的。ただし入札に参加したのは2社だけ
市民ホール(天神)PFI約280億円2025年3月に開館。ただし予定より1年遅れ、工事費も13億円増えた
総合体育館(照葉)PFI約148億円2018年開業、利用は順調。ただし入札は2グループ・落札率99.7%で、競争がほぼなかった
九大箱崎跡地の開発土地は九大が売却道路・公園など2028年度から街びらき予定。市のお金は軽いが、中身は住宅開発に近い
人工島(アイランドシティ)市債+第三セクター約2,591億円28年かけて土地を売り切り152億円の黒字。ただし助けたのは超低金利で、分譲面積の約37%は市自身が公共施設用地として購入(議会での指摘に市長は反論せず)
こども病院の人工島移転直営(調査中)病院は動いている。ただし移転を正当化するため、現地建替えの費用が1.5倍にふくらまされていた
ロープウェイ構想調査費5千万円(使う前に停止)市長の肝いりだったが、議会が39対20で調査費を止め、撤回×
ウォーターフロント再整備直営+検討中約95億円支出済み頼みのクルーズ船が年328回→208回に減り、構想10年で民間開発は始まらず×
新しい清掃工場(西部)DBO数百億円(未定)業者を選ぶ委員と応募企業のつながりが発覚し、入札やり直し。稼働は1年遅れに×

補足:アイランドシティの「本当の収支」

市の発表は「完売・152億円の黒字」。ただし収入1,771億円の中には、市が自分で買った土地が含まれます。総合体育館 約47.9億円、こども病院 約44億円(計画値)、中央公園 約126億円。確認できた分だけで約218億円、議会では「分譲面積の約37%を市が買い支えた」と指摘され、市長は反論していません。さらに企業誘致の交付金は総額約260億円に達する見込み。これらを差し引いた実質の収支は、赤字の可能性があります。市はその計算を公表していません。買ったこと自体が悪いのではない。問題は「売れた」と数えて黒字の物語にすること。建てる前と、閉じる後に、第三者が数える関所が要る理由がここにあります。

失敗した事業の共通点は、3つでした。

「来るはずのお客さん」をアテにした。ウォーターフロントは外国のクルーズ船、人工島は進出企業。どちらも自分では動かせない相手だ。うまくいった事業は、地下鉄も天神も水道も、「もう来ているお客さん」の上に建っていました。

数字が、決めた結論を飾る道具になっていた。こども病院の移転では、現地建替えの費用が1.5倍にふくらまされていたことを、市が自分で設置した調査委員会が指摘しています。

止まる場所が、いつも「最後の砦」だった。止まった事業は、議会の反対や報道での発覚で止まった。議会と報道が機能している証拠で、これは福岡の良いところです。ただ、砦が動くのは計画が進み、調査費が付いてから。手前で止める市のルール(着工前の第三者チェック)で止まったものは、ひとつもありません。北九州市にはその制度があります。関所は議会の代わりではなく、議会が判断する前に数字を揃えて出す仕組み。砦の手前に、関所を置くという話です。

そして、これからの10年は、この16年より厳しくなります。市が持っている建物や水道の修理・建て替えに、今後30年で約5兆円(年平均約1,700億円)かかる見通しを、市自身が出しています。ウォーターフロントの築44年の施設をどうするかという数百億円の判断も、次の市長に来ます。堅実さは引き継ぐ。そのうえで、失敗の3つの共通点を、ルールで塞ぎます。③ つくる前に、数える① もうある場所(学校・公園)を風の谷に

その第一歩として、市の施設 約1,900か所の電力消費を、市の公開データから「見える化」しました。市の建物の電気代は、ざっと年70億円。いちばん使っているのは、学校でした。数えるべきものを、先に数えて見せます。見える化 第1号:市有施設エネルギー第2号:公園

指標の選び方:「数えなおす福岡」(点検の全体報告)

市の看板の数字を、5つの分野で一次資料まで遡って点検しました。分かったことは3つ。

市の現場の指標は、意外なほど誠実です。施策レベルの成果指標68本のうち74%は実測ベースで、犯罪件数や商店街の悪化もそのまま公表しています。地下鉄は累積欠損金910億円まで自分で開示し、交通事故の年報は「人口当たりでは政令市ワースト5位」と冒頭に自分で書いています。ここは信用できる。

「数えやすいもの」への逃げは、事業レベルに集中しています。約300本の事業指標の72%が「人数・件数・回数・累計」。やった量の数字で、暮らしが変わったかどうかの数字ではありません。そして10年の総合計画(議会が議決する唯一の計画)には、数字の約束がひとつもありません。

良い数字が資料の中にあるのに、看板に選ばれないことがあります。開業率1位の隣に廃業率が、待機児童ゼロの隣に定義から外れた未入所の子が千人規模でいます。一人当たり公園面積8.49㎡の4分の1は、海の中道海浜公園1か所です。オンライン化率92%は「申請できる」の率で、実際に使われたのは約半分です。

だから私は、隠された数字を暴くのではなく、もうある数字の並べ方を変えることを提案します。市有施設の電気代と自給率。開業と廃業の差引き。未入所児童数。不登校の受け皿カバー率。地下鉄の混雑率。公園の徒歩圏カバー率。健康寿命。市長になったら公表する数字のリストを、先に公開して選挙に臨みます。