政策②のなかみ(2026年9月6日)

事務コスト 1/10へ。
毎年70億円分の時間を、作り出す。

AI駆動型行政で、定型事務を10年で1/10に。浮いた時間は、対話と現場へ。

18,483
市の職員数(令和6年)。5年の増加+2,010人の76%は教育——特別支援学級の子どもが2.2倍になり、先生を増やしてきた
1,654億円/年
人件費(令和7年度予算)。市の仕事の最大コスト
1,020万件/年
行政手続きの処理件数。92%は「オンラインでできる」のに、実際に使われたのは約半分
昭和41年生まれ
基幹システム(住民票・税など)はホストコンピューター系のまま。入れ替え完了は2030〜32年ごろ

実は、「できる」と「楽になった」は、別の話です

オンラインの入口は、もうできています。それでも電話の一次応対は人手のまま、画面の使いやすさはばらつき(犬の登録86%・原付23.6%)、窓口に来るしかない人の手間も残ったまま。足りないのは人ではなく、時間の返し方。紙・転記・電話・調整という仕事の形が、変わっていないからです。

創造的な仕事 1日45分 7時間(10年で・約10倍)
市役所職員の時間の使い方を、ひっくり返す。
基幹システム入れ替え (2030〜32年・AI前提で設計) まずRPA・AI-OCRで事務を約1/5に (つくば市で実測済みの範囲) 完全自動化を上乗せして、1/10 定型事務 受付・記録・転記・照合・電話の一次応対 市全体で年170万時間 → 17万時間へ 対話と、創造的な仕事 相談・現場・企画・合意形成 45分 7時間 いま 5年 10年後 1日の勤務時間(7時間45分)の中身 ※定型事務が1日の9割を占める職員の概算モデル。創造的な仕事 45分→約7時間=約10倍 市全体の効果は実測で毎年公表。届かなければ数字ごと直します

※70億円の計算:定型事務 年170万時間(手続き1,020万件×10分)の9割 ÷ 職員1人の年間労働 ≒ 810人分 × 平均人件費895万円(1,654億円÷18,483人)≒ 年約72億円。根拠は下の出典へ

全体の流れ:両側から、対話へ

AIは、人と人のあいだに入る道具ではなく、あいだから雑務をどかす道具です。

市民 書類・待ち時間 たらい回し 職員 記録・転記・電話 雑務はAIへ 雑務はAIへ 対話 両側に心の余裕が生まれて、人と人が真ん中で会う 声がデータに AIが整理 議会が決める 条例 決めるのは、人と議会のまま。集める仕事だけを、機械へ。
たとえば:給付のお知らせは、封書から「受け取る」ボタンへ。ひとり親家庭には、給付のたびに封書が届き、書類の手続きが始まります。制度は国でも支給の事務は市。だから市で変えられます。公金受取口座とプッシュ型給付の仕組みで「お知らせが届き、辞退しなければ振り込まれる」方式は実施済みの自治体が既にあります。福岡市はLINEに載せるだけ。封書は口座未登録の方への並走手段に残します。

ぜんぶ、もう起きたことです

この計画に発明はありません。日本の自治体で実測された数字だけを積んでいます。

延べ1,500時間 数秒。
保育所入所の割当計算、約8,000人分(さいたま市・実測)。確定と通知は、人が行います。
保育所の選考計算、もう1例東京都港区500時間 5分
市民税の定型事務つくば市・RPAとAI-OCR。「機械に写す」だけでこの規模作業時間 79〜83%減
役所の内部事務 83業務豊中市年1万900時間 削減
ごみ分別の問い合わせ横浜市・チャットボット。3割は夜間=閉庁時間の需要を機械が吸収年216万件に応答
転入の窓口手続き北見市・書かない窓口6分 3分半

出典は数字の出典へ。福岡がやるのは、この実測済みの部品を1,020万件の手続きに組み上げることです。

やること、五つ

目指す体験はひとつ。気づかないうちに、仕事が終わっている。手続きも記録も、意識される前に済んでいる、魔法のような体験です。以下の五つは、ぜんぶそのための手段です。

ここも新しい発明はほぼゼロ。実測値が出ている他都市の実装の組み合わせです。

その1
もう、書かせない。「書かない窓口」を全区へ。職員が聞き取り、書類は自動作成(北見市で転入6分→3分半)。福岡市は「行かない窓口」(オンライン化)は先進だが、窓口側の「書かない」化は公表情報で確認できず、議会でも導入を求める声が続いてきた。行かない×書かないを両輪にし、市が実証した公民館のリモート窓口も全区へ国の交付金メニューあり・約70自治体が導入済み
その2
AIは配らない。仕事に、埋め込む。「全員にアカウントを配って研修して終わり」はやりません。局長級の幹部が自らデザイナーと並び、記録や照合が自動で済むように仕事の流れそのものを作り直す。道具は業務の中に埋め込まれて届く。トップが作れる組織は、現場も作れる。効果は実感アンケートでなく実測で報告エンジニアでない私にも作れました。市長室でも、手を動かします
その3
入口は、ひとつ。防災だけで4つある入口を束ね、「あなたはこの制度が使えます」と市役所から知らせるプッシュ型へ手続き1,020万件の摩擦を減らす
その4
市役所の電話が、24時間つながる。一次応対をAIで24時間・多言語に。正直に言うと、完成形は世界にまだありません(エストニアのAI窓口も音声は未稼働)。FAQ→定型受付→取次と段階導入し、基準に届かなければ止める福岡が最初の実装都市になれる領域
その5
昭和41年生まれの頭脳を、入れ替える。基幹システム(住民票・税など)の入れ替えは2030〜32年、30年に一度の機会。AI前提で設計できるかで、次の20年が決まる刷新はどのみちやる=追加の大型投資ではない
現状をくわしく:DXは全国先進。でも、忙しさは減っていない
① 増えたのは、学校の先生。5年の職員増+2,010人のうち76%が教育部門。市の説明は「学級数の増加等に伴う教職員の増員」で、実際、特別支援学級の子どもは6年で2.2倍(2,880人→6,181人)になっています。学びに必要な増員です。それでも事務の忙しさが減らないのは、人が足りないからではなく、紙・転記・電話・調整という「仕事の形」が時間を食っているから。
② 「できる」のに、使われない。
オンラインで「できる」
92%
実際に使われた
55%
原付の手続き
23.6%
犬の登録
86%
55%という平均は悪くない。問題はばらつきです。同じ市役所でも、使いやすい犬の登録は86%(7,263頭対1,212頭)、原付は23.6%。差は市民の意欲ではなく、画面の出来。市民目線でデザインからやり直せば、80%超えは特別な目標ではありません。
③ 実証は済んだ。実装が、ない。市は職員50人の実証で96%が「使い続けたい」と回答。東京都は6万人、神戸市は全職員に基盤を配っています。ただし、アカウントを配って終わりの話ではありません。受付・記録・決裁という仕事の流れそのものにAIを組み込み直す設計が本体で、そこまでやり切った自治体はまだない。福岡は実証で止まっていますが、裏を返せば、基盤の配布と業務の組み込みを最初から一体で設計できる位置にいます。
④ 良いところも、正直に。粗大ごみLINE受付など現場の工夫は全国級。市のDX戦略自身が「効率化で生じた人的資源を、人のぬくもりが必要な分野へ振り向ける」と書いている。思想はもう、ある。実行の規模が足りていないだけです。
どこまで任せるか:線引きの表(完全自動〜人にしかできない)

「AIに任せる」を、ふわっとさせません。裁量ゼロ・本人確認がデジタル完結・例外が少ない。この3つが揃った業務だけを完全自動にし、どの手続きがどのレベルかは表で公開します。裁量ある処分は、最終の確定を人が行います。

A:完全自動(人ゼロ・24時間・即時) 証明書交付・定型届出・予約・状況照会・通知・転記・資格確認・内部事務 B:機械が処理、人は確定ボタンだけ 保育所選考の計算・現況確認・罹災証明の一次判定・督促の発送判定 C:人が主役、AIは横で支える ケースワーク・相談・複雑な案件 D:人にしかできない(時間を増やす先) 対話・合意形成・虐待や困窮への対応・災害時の判断・現場 Aで浮いた 人の時間を Dに返す 手続きは年1,020万件。1件10分なら年約170万時間=職員900人分(概算)。この出どころがAとBです

だいじょうぶなのか(正直な課題)

① AIは、まちがえる。NY市のチャットボットは違法助言で廃止方針に。横須賀市も「6%が不適切な回答を経験」と公表。答えの最終責任は人が持ち、香川県三豊市の「正答率94%で導入をやめた」判断を見習う。基準に届かなければ、出さない。
② 個人情報。入力データを学習させない構成と、国・東京都型のガイドラインを導入の前提にします。
③ 置いていかれる人が出ないか。デンマークは電子化の義務と同時に「免除の権利」と対面窓口を法律で保障しました。福岡も同じにします。窓口は減らしません。機械に任せて浮いた人手で、対面はむしろ手厚く。「人のぬくもりが必要な分野へ」は市の戦略の言葉です。実行します。
④ 職員の仕事はなくなるのか。正直に言います。福岡もやがて人口減少に入ります。市役所の人数も、減り方に合わせて呼吸できる体制にしておくべきです。幸い役所には毎年の定年退職と採用があり、誰も解雇せずに人数をゆっくり変えられます。AIで仕事の中身(転記・照合・たらい回し)を先に減らしておけば、人が減っても現場は回り、教育や福祉など人にしかできない仕事へ人を集められる。雇用を切る話ではなく、人口カーブに合わせて呼吸できる市役所にする話です。
⑤ どこまで自動化していいのか。行政法の整理では、裁量ある処分は最終段階で人の関与が必要。だから線引きを先に固定します。定型は完全自動、裁量は人が最終確定(上の「線引きの表」)。あいまいなまま自動化を広げることはしません。

数字の約束:数えるのは、導入数ではありません

測る1
手続きに使う時間市民が申請に費やす時間。いまは測られていません
測る2
窓口と電話の待ち時間リアルタイム表示はあるのに、実績は記録も公表もなし
測る3
一回で終わった率書き直し・出し直し・「もう一度来てください」がなかった割合

この3つを測り、毎年公表します。オンライン利用率(55%)は目標にしません。窓口を閉じれば上がる、操作できる数字だから。使いにくい手続きを探すレーダーとしてだけ使います。

この計画自体も、政策③「つくる前に、数える」の関所に通します。効果は実感アンケートでなく、時間と件数の実測で毎年報告します。

注記と出典